【放送後追記あり】ナイナイ岡村さんのANN炎上発言について「岡村さん叩き」だけで終わらせてはいけない件

せっかくの個人ブログなので、時事ニュースなども気まぐれで書こうかと思う。
なお、このエントリは私がレギュラー出演しているラジオ番組、RBCiラジオ「アップ!!」で喋ったことをベースにしている。番組もしくよろ!
まずは表題の件について、時系列をおさらい。
・4月23日、ニッポン放送「ナイティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」の番組内で、リスナーからの「新型コロナウィルスの影響で風俗店に行けない」というメールに答える形で「いつか雨はあがる」と外出を自粛するよう促す。そして「コロナが収束したら絶対おもしろいことがあるんですよ」「コロナ明けたらなかなかの可愛い人が、お嬢をやります。なぜかと言うと短時間でお金を稼がないと苦しいですから」と発言。
・この発言を4月26日にFlashのWebが報じると、多くの人の目に止まり批判が殺到。炎上状態へ。4月27日には、ニッポン放送が謝罪文をホームページに掲載。29日には吉本興業のサイトでも岡村さん本人が謝罪。本日4月30日深夜のオールナイトニッポンでも岡村さんは謝罪するとのこと。
・Webでは、公共放送NHKに出演している岡村さんの番組降板を求める署名も行われている。
発言の是非は一旦置いといて、「炎上」のメカニズムはおそらくこう。
・今回は典型的な炎上パターン。「身内に向けて、そのコミュニティ内だけでウケる少しオーバーな言動」が、外に漏れて燃えるというやつ。
・政治家の講演会での失言、アルバイトスタッフのおふざけ動画、別の問題のように見えるが、根っこの部分は同じで、今回もそのパターン。
・「深夜ラジオ」は、パーソナリティーとリスナーのある種の共犯関係の上で、馬鹿なことやくだらないこと、あるいは下ネタなどを展開する場所で、少し前まで公共の電波の中でも治外法権的な場所だった。
・しかし、近年ではradikoのタイムフリーや、違法アップロードなどで、簡単に多くの人が聞くことができるようになる。治外法権が可視化されやすくなっている。
・女性の人権を蹂躙するような言動は、燃えやすい。いわゆるフェミニズムが絡む問題は、多くの人たちが集まり、意見を言い合う。今回も、貧困に苦しむ女性を性的に搾取することを楽しみにしていると受け取られる発言で、「女性の人権」の問題に発展している。
(世界的な運動「#Metoo」や、韓国N番ルーム事件の厳罰化署名など)
これらを踏まえると、炎上したこと事態に不可解さはない。
ここからは私の意見。
・「岡村さんが処分されるのか」という野次馬的な問題に落とし込むのではなく、この発言が内包している問題、怒っている人たちの主張に「賛同」はしなくても、「論理」は分かっていないといけない。そうしないといつか自分が無自覚に他人の人権を蹂躙するから。
(のちほど私のやっちまった案件も出ますし、それ以外にも無自覚で似たようなことを沢山やらかしていると思う)
・世の中には、性風俗店が多数存在している。働いている人たちは様々な事情があるだろうが、構造的な貧困から望まずに過酷な環境で働いている人がいることを知ると、多分印象が変わる ※参考『沖縄アンダーグラウンド』
(望んで働いている人や、経済的に大成功を納めている女性もいるだろうが、こうした例を持ち出して矮小化しないこと)
・「バーニラ、バニラ、高収入!」がある種のネタとしてSNSに定着するほどには性産業への敷居は低く、私たちは無自覚に「面白案件」として扱いがちである。
→自分もわずか1年前にネタ的な文脈でバニラを使っていました(さらに女性候補者の名前を出して)。偉そうに言っておきながら自分も意識が低いので、反省しています。
・深夜ラジオは閉じた世界ではないと言うこと。これはSNSの使い方にも似ている。身内しか見ていないと思いきや、拡散されて炎上とか。岡村さんはオールナイトニッポンをコンビ時代からカウントすると26年やっていることになるため、そこの認識にギャップがあったのかもしれない。
・お笑い芸人と人権意識の衝突問題。お笑い芸人の「面白ければ何をしてもいい」というマッチョ体質が、これからの時代の大衆の人権意識とギャップが出てこないか。
(ここをすごく意識しているのがせやろがいおじさんだと思うので、今後のお笑いの歴史にパラダイムシフトをもたらすと信じている)
・今回の件も、番組スタッフが風俗に絡んだ質問メールをチョイスし、回答中も笑い声が入っていた。放送中にお詫びや説明はなかったため、岡村さん一人ではなく、番組制作サイドも「問題無し」と認識している可能性が高く、個人というよりも業界の問題点もあると思う。
この辺りが(私の中での)認識のスタートラインで、ここから先は男女格差をなくしたり、女性が性的に搾取される社会構造を変えるためにアクションを起こす必要があると思う。
こうした運動はなにも女性だけのためではなく、社会的に弱い人が保護されやすい・生きやすい社会は、みんなが生きやすい社会になるから、「なんか面倒臭い人がイチャモンつけてるな」で終わらせるのではなく、しっかりと問題と向き合った方がいいよ。
岡村さん個人の問題にするのではなく、社会ではびこっている男女格差、広く共有されている性風俗への偏見、さらにはそうした声を潰す「間違った中立」など学びがとても多いし、考えれば考えるほど(特に男性は)過去を反省したりすると思うので、何度も言うけどなんとなくスルーをしない方がいいと思う。
以上!
【放送を聞いてからの追記】
4月30日のオールナイトニッポンの生放送を聞いた。
冒頭30分、岡村さんは一人で反省していることを繰り返し喋っていたが、具体的な内容には「もう一度触れると、不快な思いをさせるかもしれないから」と踏み込まなかった。
社会人なら経験あると思うが、なにか問題が発生したときに「すみません」と泣きそうな声でずっと謝るが原因の究明や防止策などがない、謝るためだけの謝罪である。
30分経過後は相方の矢部さんが生放送に参加し、ナイティナインの歴史を振り返る、公開説教に変わっていた。そこから具体的な中身の部分について踏み込まれる。
その中で矢部さんはこれまでの言動から岡村さんの「女性蔑視」を指摘。さらには、番組制作側とリスナーとの「共犯関係」についても触れた。
個人的には「岡村隆史発言」そのものよりも、あの発言をうけて「何が悪いのか分からない」と、開き直って学ぶことすら放棄する人があまりにも多いことに衝撃と、軽い絶望を覚えた。
同時に、私も別の社会問題や事案に関しては同じムーブを決め込んでいる可能性が非常に高いので、人をどうこういう以上に、考えていきたい。